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Mystandard


Episode 05 ドーン・ロブソン=ベル(タータンデザイナー)

スコットランドの自然と伝統が育むタータンチェックが
「ミステリアス・ブリティッシュ」を作る。

ドーン・ロブソン=ベル(MS. Dawn Robson-Bell):ロキャロン(LOCHCARRON)社 タータンデザイナー、シニアエグゼクティブディレクター。1964年、スコットランド生まれ。ヘリオット・ワット(Heriot Watt)大学 繊維デザイン学科を卒業し、ロキャロン社に入社。今年で在籍30年を迎える。
interview & text: Kana Yamamoto / edit: Yuki Ishida

 



23区の25周年をセレブレートする特別インタビューシリーズ「My standard 25th」。第5回となる今回は、スコットランドのロキャロン社からタータンデザイナーでありシニアエグゼクティブディレクターのドーンさんをお迎えします。王室の方々をはじめ世界中の人々から愛され続ける同社は、伝統を大切にしながら、革新性も持ち合わせた老舗メーカー。今シーズンのテーマ「ミステリアス・ブリティッシュ」なタータンができるまでについても語っていただきました。


 

教えてドーンさん。タータンチェックとロキャロン社の歴史

 

ー タータンチェックのデザイナーとは、どのようなお仕事なのでしょうか?ドーンさんの、ロキャロン社での経歴も交えて教えてください。

かれこれ30年間、デザインの仕事をしています。1987年、私はスコットランドにあるヘリオット・ワット大学のボーダーキャンパスを卒業し、 ロキャロン社の紡績糸の店に就職したのが始まりです。幸運にも私の仕事が会社に認められ、キャリアを積んで、デザイナーでありシニアエグゼクティブディレクターという今のポジションに就任しました。

デザイナーの仕事は、タータンの柄や生地のデザイン。それに加えて、デザインチームの管理やコレクションの監修も主な仕事です。 様々なお客様がいらっしゃるので、とても面白くてやりがいがあります。ファミリー向け、デザイン会社用、アニメのキャラクターなどなど、 それぞれのお客様の想いをタータンに落とし込むために、注意深くお客様の声に耳を傾けることを心掛けています。

 


社名は、地名「ロキャロン」に由来する。美しい山とキャロン湖(Loch〈湖〉+Carron=ロキャロン)

 

ー ロキャロン社は19世紀後半より続く世界的に有名な老舗ですが、その歴史を簡単に教えてください。

1892年に遡る創業と伝統から、1940年代、ジョン・モーリス・バッハン(John Morris Buchan)は、 スコットランドの北西部で伝統的な機織り技術の復興に取り組んでいました。彼がロキャロンの町に小さな機織り工場を設立したことが、社名の由来になっています。その後、ボーダーという地域に移転し、ローカルビジネスを買収しながら成長を続けました。これまでの歴史で生地は時代に応じて変化をしても、タータンは変わらずに残り続けたんです。


ー ロキャロン社はタータンを代表するメーカーと言われていますね。

タータンは、スコットランド人にとって数百年もの間、アイデンティティを定義するモチーフとして使われてきました。戦乱の時代には、タータンの柄で敵と味方を見分け、自身と一族の安全を確保していました。タータンはいわば「ユニフォーム」だったのです。今日では、その歴史や成り立ちも人気の要因となり、世界的に広がっています。私たちが伝統的なタータンを多数所有していることから、世界を代表するタータンのメーカーと言われています。

 


ガラシールズにあるロキャロン社の手織機工場。1958年2月に新聞『The Times」の特集の表紙に使用された写真。アーチー・スマイル氏がブキャナンタータンを手織りしている写真

 

「ブラックウォッチ」(軍隊用にも採用されているタータン。青地に黒と緑の配色)や「ロイヤルスチュワート」(女王陛下の衛兵が身につけていることで知られているタータン。赤地に緑と青の配色)、「リンゼイ」(リンゼイ家のタータン。深い赤地にネイビーと緑の配色)などはよく知られていますが、それぞれのブランドで表現されると、まったく違ったものに見えるのです。これは、タータンはコマーシャルでありながら、コレクションに別の面白さをプラスすることのできる“特別な存在”であることを意味しています。

 

ー 伝統的なだけでなく、今シーズンは「ブリティッシュファッション」と「タータン(柄)」が大きなトレンドとなっています。

UKのテキスタイルメーカーとして、UKテキスタイルに注目が集まるというのは、非常に嬉しいですね。ブリティッシュスタイルは長い間、様々に解釈されてきましたが、今もなお人々を惹きつけ、世界中のデザイナーが独自のひねりを加え続けています。タータンは、スコットランド人にとって歴史的な意味があるという事実が、より人々の興味を掻き立てているようです。

 

「ミステリアス・ブリティッシュ(Mysterious BRITISH)」の作り方

 

 

ー ドーンさんは日本好きだとうかがっています。

東京にショールームがあるので、何度も仕事で訪れており、いつも楽しい時間を過ごしています。本来、大都市は苦手なのですが、東京は好きなんです。 大都市だけど、そう感じさせない、居心地の良い場所。みなさん礼儀正しくて親切! そんな特別な場所は、世界中を探してもなかなか見つからないと 思います。


ー チーフデザイナーの麦倉さんとお仕事をされた感想は?

23区チーム、そして麦倉さんと仕事をするようになって数年が経ちますが、親密な関係が築けて幸せです。23区は「洗練」と「エレガンス」をテーマにした普遍性のあるブランドなので、数シーズンにわたってコレクションを見られているのは嬉しいですね。シーズンテーマは毎回よく練られていて、トレンドは参照するけれど、それに囚われていないのを感じます。自信と信念の表れですよね。


ー 23区の10月のテーマ「Mysterious BRITISH」を、タータンでどのように表現されたのでしょうか?

25周年を迎える記念すべきシーズンに、23区チームがロキャロン社を訪れたのは2017年の初め。私たちはまずカラーストーリーを組み立てて、 それからタータンの柄に落とし込んでいきます。今シーズンの23区のテーマ「Mysterious BRITISH」のカラーパレットはダークで力強かったので、 似たような色を使ったタータンのアイデアでいこうと考えました。

 


ドーンさんが今回のコレクションの中で一番のお気に入りという「コリー(Corrie)」のタータンを使用したスカート。

 

今回デザインしたタータンは、クラシックかつノスタルジックなムード。ヴィンテージのような風合いがありながら、とても洗練されたものになったと思います。タータンはコントラストの強い色を組み合わせることが多いのですが、このような同系色を使うのは新鮮でした。ストールはもっとカラフルに してアクセントカラーを加え、より生き生きした印象に仕上がりました。


私たちはたくさんのアーカイブを紐解き、コンピューターでいくつかの新しい柄を作成、そしてさまざまな組み合わせのタータンを用意しました。 23区のコレクションに加えるベストなタータンを吟味してもらった後、CADでさらに調整し、大きな見本サイズで確認しながらパーフェクトなタータン を提案しました。


ー 今回のコレクションで特に好きなパターンはありますか?

すべてうまくデザインできたので、難しい質問ですね。でも、1つ選ぶとすれば「コリー(Corrie)」でしょうか。グレーとブラウンとキャメルのコンビネーションで、クラシックな雰囲気に。ユニセックスなパターンですが、そういうところが好きなんだと思います。

 

お客様と自然とのコラボレーションが何よりも大切

 

ー インスピレーションを得るためのインプットはどのようにされていますか?

私たちにとってもっとも大切なことは、お客様とともに作品を作り上げることです。スコットランドの自然、アーティスト、職人たちにも刺激を受けています。23区のカラーパレットは、森林地方のブラウンや湖の深いブルーやグリーン、スレートグレーを想起させます。

 

 

個人的には、お休みの日はアウトドアで過ごすようにしていて、キリとノラという2匹の黒いラブラドールと、主人のリチャードとハイキングに出かけたり、ビーチに行ったり。ガーデニングにもハマっています。女性だけのランニンググループで走ったり、時間があればキルトパッチワークをしたりしています。


ー 最後に、25周年を迎えた23区にメッセージをお願いします。

23区の25周年が成功すること、また、今後も23区が成長し続けることを願っています。そして、この記念すべき大切な年に、 私たちが重要な役割を担わせていただけたことに感謝しています。

 


スコットランドの北西、ロキャロンの町にある最初の織工場の正面。残念ながら工場はもはや稼動していないが、この建物は観光客向けの素敵なショップとして使われている

 

 

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