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Mystandard


Episode 03 村尾 千鶴子(アートディレクター)

23区の“女性像”を追い求めて。
好きであれ、楽しみつくせ!

村尾 千鶴子(むらおちづこ):アートディレクター、クリエイティブディレクター。クリエイティブオフィス「GLUE(グルー)」主宰。大手商社でファッションブランドビジネスに携わった後、ファッションを新たな視点から支えることを目指して、広告デザインの世界へ。1984年より食品、音楽、ファッションなど幅広い分野で活動後、1995年にGLUE設立。2012年より23区のカタログやキャンペーン等のビジュアルイメージを担当する。
photo: Rakutaro / interview & text: Kana Yamamoto / edit: Yuki Ishida

 



23区の25周年をセレブレートする特別インタビューシリーズ「My standard 25th」。第3回目にお迎えするのは、アートディレクターの村尾千鶴子さん。23区の服をビジュアルイメージに翻訳し、ブランドの世界観を作りあげています。印象的なキャンペーンビジュアルの数々はどのように生み出されるのでしょうか? 23区スタッフからの信頼も厚く、ファッショニスタとしても有名な村尾さんのライフスタイルは参考にしたいことばかりでした。


 

俯瞰とディテールの視点。アートディレクターのお仕事

 

ー アートディレクターとしてご活躍されていますが、いつ頃から23区のお仕事を手がけられているのですか?

20周年となる2012年の秋冬シーズンからでしたね。はじめはカタログや20周年のロゴなど、全体の中の一部分を担当していましたが、これまでの制作物を見てみると、ルックブックやカタログのいろいろなところが気になってしまって。ディテールまで目が行き届いていない、大手特有の大味な感じでした(笑)。
元々は広告デザインをやっていたので、全体でどうプロモーションしていくのか、どんなイメージや情報を消費者に伝えるのがベストなのかを考えてしまう。自ら仕事を増やしていっちゃうタイプかもしれません(笑)。ブランドの良さや伝えるべきことを整理しながら、写真をキレイに撮ったり、テーマに合ったモデルやスタッフを選んだりと、シンプルなことですが一つひとつ丁寧に取り組みました。バインダーにしても、リングの形状や紙質を変えるとか、ちょっとしたことでクオリティって上がるんです。そのうちに、23区のルックブックやカタログが俄然良くなったと社内で話題になったそうで、オンワード樫山の他のブランドも追従するようになったと聞いています。

 


印象的だった仕事の一つが、2016年 秋冬の「BE CHIC BE MODERN」。「ニューヨークで撮影したのですが、フォトグラファーのトーマス・ロア(Thomas Lohr)は強く記憶に残っています。こんなに粘るフォトグラファーっているんだ、と」。光と影にこだわったストイックな世界観は、まさにシックでモダン!

 

ー 23区のアートワークを手がける時は、どのようなことに気をつけていますか?

ファッションって、(服の)デザイナーの思いが第一にあると思うので、それを理解すること。クリエイティブだけが先行してもうまくいかないと思うんです。私の中では、「23区らしさ=麦倉三智子(23区チーフデザイナー)」。フェミニンで尖りすぎない服、それが23区であり、麦倉さんなんです。だから、寄り添って寄り添って、与えられたキーワードを紐解きながら、せま~いストライクゾーンに確実に投げることを心がけています(笑)。つまり、彼女の思いを、共有して、共感して、ビジュアルというカタチで描きなおす作業です。それには信頼関係が重要なんです。麦倉さんが「自分が思っていたことを、いつも最後にはカタチにしてくれる」と言ってくれるのですが、嬉しいですよね。

 

 

ー 村尾さんはアートディレクターにとどまらず、クリエイティブディレクターとしてもご活躍されています。

コミュニケーションツールを写真にするのか、イラストにするのか、動画にするのか、まったくゼロの状態からどう表現するのかを考えるのが仕事。そして、自分が作りたい絵を実現するためには、スタッフィングも重要だし、予算も必要。どちらかというと私は、限られた予算内で「知恵をしぼって相手の予想を超えるものを作ってやる~」って思うタイプ。その方がスリルがあって、ダイナミックで楽しいですよね。アートディレクターやクリエイティブディレクターになるということは、そういうことも全部引き受けることだと思うのですが、それは、グラフィックデザイナーだった頃から「全部を仕切りたい」って思っていた私が目指した場所なんです。

 

ー 「GLUE」はファッションに特化したデザイン事務所ということですが?

できることなら、商品開発からはじまって、ネーミング、ロゴデザイン、グラフィックデザイン…消費者の手元に届くまでの全行程に携りたい思っているからです。 そう考えると、自分を存分に発揮できるのは「ファッション」か「化粧品」のフィールド。特にファッションは大好きで、私のライフスタイルの一部になっているし、深いところから理解することができるかなと思って。

 

 

ファッションの原点はオシャレな母親にあり

 

ー ファッションに興味をもったきっかけはどのようなことですか?

原点は母です。生きていたら85歳になりますが、とにかく趣味が良くて、モノをとても大切にする人でした。洋裁に編み物、絵も描いていましたね。服をリメイクしてくれたり、おままごとでお魚を包む包装紙をサッと絵を描いて作ってくれたり。母のおかげで、遊びの中でモノづくりを身近に感じてきました。

私は靴が大好きなんですが、子どもの時にスニーカーを履いた記憶がない。エナメルやウイングチップの靴にグレンチェックの服で、まるでイギリスの子どもみたいな格好をしていました。決して、子どもに高価なものを、ということではなく、あるものでとても上手に生活を楽しんでいる人だな、と。そういうことが私の原点にあるんですね。

母は戦後に青春時代を過ごしていますが、あの感性はどのように磨かれたのだろうって、思います。今の時代、これだけモノがあふれていても、センスが育まれるかというとそうとは限らないですから。

 

ー ご自身のインスピレーションの源になっているモノ/ヒトなどがあれば教えてください。

この事務所を見てもらっても分かるように、とにかく本! 本やアートや写真が大好き。特に、80年代後半から90年代の洋雑誌「RAYGUN」、「Harper's Bazaar」、「Italian Vogue」は私の素になっていますね。ファッションも写真もグラフィックも自由で新鮮。こういうことをやれたらいいのに、って。それなのに、どんどん逆方向に向かっている。さっきの話に戻りますが、モノがない方が自由にいろいろなことを考えられるのかもしれませんね。

 

 

23区の今シーズンのテーマ「AMBIVALENT ATTITUDE」を語る

 

ー さて、今シーズンのテーマには、どのようにアプローチされたのでしょうか?

これまでのシーズンテーマは、具体的で、服のデザインも分かりやすくガラッと変化してきました。でも、今回のテーマはとても抽象的で、服はすごくリアルになっていた。いつもなら初めのオリエンテーション中にイメージが浮かんでくるのに、キーワードとイメージボードが頭の中で像を結ばなかったんです。「23区の服をまとった、フェミニンとマスキュリンがミックスした女性像」というお題が、ハードルが高くて。先行するテーマと“リアル”な服を上手くビジュアルに落とし込んでいく作業は、経験と勘がモノをいいました。

一番こだわったのは、“アンビバレント・アティチュードな女性像”を撮れる写真家選び。ニューヨーク、ロンドン、パリ…世界中から気になる人を探し出し、最終的にはイタリア人写真家のステファノ・ガルッツィにたどり着きました。

 


「こうしてコラボレーションできるフォトグラファーとの仕事は楽しい。お互いに刺激しあって、みなさんに何かを与えられるものを作り出すのが醍醐味」と村尾さん

 

「ジャパニーズ・ウィメンズ・スタンダード」を目指して

 

ー 今後、23区で目指すべきビジョンを教えてください。

2015年の23周年は、ブランドにとってすごく節目の年だったと思うんです。スタッフがビジョンを共有するためのブランドバイブルも作りましたし、ドイツのファッション写真の巨匠、ピーター・リンドバーグが(松岡)モナさんを撮影してキャンペーンを打ったのも衝撃的でした。その時のスローガンが「ジャパニーズ・ウィメンズ・スタンダード」。ここから本当の意味で、日本発信のスタンダードをグローバルに浸透させ、世界で通用するブランドへと成長してほしいという思いが込められています。

巨匠ピーターのビジュアルを超え、ブランドらしさを世界レベルで発信しつづけることで、23区の「女性像」や「顔」ができあがっていく。その一端を担っていくことが、私の役目だと思っています。

 

ー 村尾さんの思う“23区の女性像”とはどのようなイメージですか?

具体的な人はいなくて、着る人みんなが作りあげていくものだと思っています。強いて言うなら、考え方のしなやかな女性。自分らしさを持っている人。日本では若い人がもてはやされますが、オトナの成熟した女性がもっと増えてほしいですね。

 


建築家のご主人の夢だった別荘「葡萄の家」を、山梨県に建てた村尾さん。この「葡萄の家」でお休みを過ごすことが大きなリフレッシュになっているそう

 

ー 村尾さんご自身が目指す女性像とは?

自由で、思いのままで、仕事も遊びも楽しそうな、歳を重ねてなおチャーミングな人! そして、私の母が言っていました。「どんなことも手を抜かない、諦めないことよ」って。

 

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