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Mystandard


Episode 02 麦倉 三智子(23区チーフデザイナー)

偶然か、それとも必然か。
自然が教えてくれる服作り。

麦倉 三智子(むぎくらみちこ):23区チーフデザイナー。文化服装学院アパレルデザイン科卒業。1990年入社。1993年、「組曲」の立ち上げに参加し、1997年に「マイケルコース」チーフデザイナー就任。2006年、「23区」のデザイナーに就任し、現在に至る。
photo: Rakutaro / interview & text: Kana Yamamoto / edit: Yuki Ishida

 



23区の25周年をセレブレートする特別インタビューシリーズ「My standard 25th」。第2回となる今回は、23区チーフデザイナーの麦倉三智子さんをお迎えしました。時代を先読みしながら多くの人に愛される服作りは、一体どのように行われているのか? また、麦倉さんの美意識を培ってきたものとは? 23区ファン必見のお話をうかがいました。


 

チーフデザイナーのお仕事とは?

 


チーフデザイナー歴20年、23区のチーフデザイナーとしては今年で12年目を迎える。「これだけ忙しくなったのは23区に来てからです」という麦倉さんのスケジュールはまさに分刻み。毎月生み出される服の型は平均70~80にもなるという

 

ー 洋服を作るうえで最も重要なのがデザインワークですが、そのトップである“チーフデザイナー”とはどのようなお仕事なのでしょうか?

チーフデザイナーの仕事は、具体的な服のデザインをする前に、毎シーズンのイメージを考えるところから始まります。ファッション業界では1年が大きく2つのシーズン、春夏(SS)と秋冬(AW)に分けられていて、それぞれテーマを検討します。次に、各月のサブテーマを決定し、やっと具体的な形、素材、色といったものを各デザイナーと“服”に落とし込んでいくんです。テーマを決める作業は、だいたいそのシーズンの1年前。今は2018年 春夏シーズンの、6月の企画が進行しているところです。


ー 1年も前から時代を先読みしているんですね。とても直感力が必要とされそうです。

私の場合、これまでの経験や、その時々で巡り合う感動がベースにあります。「こんな方向性かなぁ」と考えていると、日常を送る中で偶然のような必然が訪れるんです。


ー たとえば、どのような必然との巡り会いがあったのか教えてください。

今年の春夏シーズンを例にとってお話しすると、このシーズンのテーマはロンドンのテキスタイル作家、ウイリアム・モリス。各月のイメージを固めていく作業の中で、漠然と“花柄”を取り入れたいなと考えていましたが、デジタルで起こされた現代の花柄には魅力を感じられなくて。そんな時、カタログの撮影で行ったロンドンでモリスの家(レッドハウス)を訪ねる機会があり、展示されている絵画や手彫りの型などを目の当たりにして、手仕事の凄みに改めて感動したんです。「手描きの柄でいきたい」という気持ちが固まり、モリスの柄を使えないかと奔走した結果、多くの方々のご協力によって実現することができました。

 


ウィリアム・モリスのデザインを生かした2017年春夏シーズンのアイテム

 

他にも、麻のシャツのデザインを考えていた時に、アメリカの女性画家、ジョージア・オキーフとの出会いがありました。同じくロンドンのテート・モダンで、彼女の個展を観たんです。これまで目にしていた印刷されたものとは全然違って、何色にも重ねられたグラデーションは、それは美しいものでした。そして、帰国して社内の図書館に立ち寄ると、発売されたばかりの『ジョージア・オキーフとふたつの家」という本が! 活動拠点だったニューヨークから移り住んだメキシコのゴーストランチとアビキューに建てた終の棲家について綴られているのですが、そこには素晴らしい景色とオキーフの好きなものだけが詰まっていて。2つの家の色合いやメキシコのピンクがかった土の色は、麻のシャツの構想と大いに通じるものがあり、自然光に美しく映えるシャツが生まれるきっかけとなりました。

 


偶然にも、麦倉さんがロンドンで出会ったこの2人のアーティストには、花や自然をモチーフにした作品が多いという共通点も

 

父親からもらった幼少時の体験と自然との関係

 

ー デザイナーを目指したきっかけは?

実は、幼稚園の頃からデザイナーになろうと思っていました(笑)。卒園文集にも「将来の夢はデザイナー」と。デパートをやっていた、洋服好きで絵画好きな父親の影響ですね。私は人形遊びが大好きで、デパートからハギレをもらってきて人形の服にして遊んでいましたし、美術館にもよく連れて行ってもらいました。父は、娘の誰かをデザイナーにしたいという気持ちがあったようですから、迷いなくデザイナーの道へ(笑)。23区はシャツとブラウスに力を入れていますが、私自身も大のシャツ好きで、クローゼットはシャツ&ブラウスだらけ。それも父の影響だと思います。もう、何十柄作ったかわからないほどシャツをデザインしていますが、パリッとした袖通りや素材感を出すために、糸一本のレベルからこだわっています。こうして振り返ると、幼少期の経験が、自分の“好み”のベースになっているのを感じますね。


ー 大人になってからの、麦倉さんのインスピレーションの源はどのようなものですか?

最近つくづく思うのは、色や柄、配色の感覚って、結局は自分たちが目にしてきた自然界にあるものがベースになっているのではないかということ。自然の中に行くと、それを強く感じます。私は海が好きで、休みが取れると海で過ごすのですが、その土地の自然に触れると、今まで着ていなかった色柄を着たくなったりする。太陽の色やそこに咲いている花などから、私たちは自然に“気持ち良いもの”を感じ取っているんですよね。日本には四季があるので、たとえば春にはパステルカラーの服、秋には深みのある色が出てくるのは自然なこと。それだけで十分じゃないのか。今って余計なことをしすぎているんじゃないか、とハッとさせられます。今の東京はコンクリートまみれになっているので、一般的に色彩感覚が薄れてきているんじゃないかと危惧しています。

 

2017年 秋冬のテーマは「AMBIVALENT ATTITUDE」。23区的“両性具有”なスタイルとは?

 


スラリとしたスタイルの麦倉さん。「最終的には自分が着て確かめないと納得がいかないので、太るわけにはいきません」

 

ー 今シーズンのテーマは「AMBIVALENT ATTITUDE」です。“両性具有なスタイル”に込められた想いを教えてください。

23区のお客様も働いている方が多いですし、社会もそういう女性像を求めている風潮がありますよね。“アンビバレント”という表現は、女性だけど男性的な要素を持ち合わせると良いんじゃないかな、という気持ちを込めてこの言葉を選びました。私自身も働く女性として、まだまだ男社会の中で生きているという感覚は拭えません。だからと言って、男性に対抗するだけでは何も上手くいかない。しなやかに活躍して、認められるための“アンビバレント”なんです。男性的な装いをしても女性らしい。23区のスタッフ必携のブランドバイブルで掲げているミューズの一人、オードリー・ヘップバーンのようなイメージです。マニッシュだけど女性らしいスタイリング。スクリーンの中とオフスクリーンの印象が変わらない自然体の魅力。そして、晩年のユニセフ親善大使としての活動にもアンビバレントさを感じます。

 


23区のブランドバイブルには、オードリー・ヘップバーン、ジャクリーン・ケネデイ、ジェーン・バーキン、ソフィア・コッポラが“理想の女性像”として登場する。

 

素材的には、メンズブリティッシュなグレンチェックやタータンチェックがイメージ。ダークでミステリアスなタータンチェックを求めて、スコットランドの老舗生地メーカー「ロキャロン」を訪ねました。自然のランドスケープから名づけられた柄がたくさんあり、先程お話しした“自然と色”についての考えが証明されて嬉しかったですね。23区オリジナルのタータンチェックを10柄ほど作っていただきました。

 


ロキャロンは王室御用達の老舗メーカー。オリジナル柄のタータンチェックで、服だけでなくストールも作られている

 

女性の内面が引き立つ洋服作りを。23区の今とこれから。

 

ー 23区の服をデザインする際に、常に心に留めていることはありますか?

「シック」である(洗練されている)こと、「モダン」であること。この2つを同時に成立させるデザインをすることは大変ですが、常に意識するようにしています。でも、モダンという言葉もとても抽象的で、一般的には“斬新”なイメージかと思いますが、私にとってのモダンは“60年代のモダンな景色“が大きく影響していると思います。もう一つが、「ニュートラル」であること。それは、やりすぎない、混ぜすぎない。 服が目立つのではなく、着る人の内面を引き立たせるような服作りを目指しています。


ー デザインしていく中で、今後どのようなことが必要であると考えていますか?

とにかく世の中がモノであふれていますよね。その中から、「何が必要なのか」を見極めていきたいし、じっくり考える時なんじゃないかと。それが、これからの23区につながっていけば良いなって思います。

 

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